2021/03/16

歴史から見えてくる課題は何か?(16)

 

東京五輪でブレイクした「ビタミンC」

 OTC医薬品として発売されたビタミン剤は食品にも広がった。1965年に発売されたオロナミンCは「食品」であり、その効能を表示することはできなかったが、「元気はつらつ」のキャッチコピーでこれまでに300億本以上を売っているという。ビタミンブームに火をつけたのは、1964年の東京オリンピックで大活躍をした米国選手団がビタミン剤を服用していたことを伝えるニュースと、ノーベル化学賞を受賞したポーリング博士が1970年に大量のビタミンCが風邪の予防やがんの治療に有効であると発表したことだと言われる。

 

 こうして、当初は脚気や壊血病の治療薬として医師が処方する医薬品だったビタミン剤が、処方箋が不要なOTC医薬品に変わり、さらにドリンク剤などの形の食品に変化して、病気の治療ではなく、元気になるため、あるいは気分を良くするために気軽に飲むものになったのだ。このことが、医薬品と食品を厳格に区別する意識が薄かった消費者心理を、さらに大きく進めたといえよう。

 

1970年代「健康食品」登場!

 「健康食品」という言葉は日本の法律にはない。法律にあるのは「食品衛生法」で規定された「食品」と、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(「薬機法」)で規定された「医薬品」の2つである。そして、病気の診断、予防、治療の効能も、「薬」という名称も、医薬品以外は表示することはできない。古くから民間医療で使われ、伝統的に「薬」と呼ばれていた民間治療薬は、明治以来、「食品」に分類されるようになった。それが「健康にいい」あるいは「健康になる」という意味で一般に「健康食品」と呼ばれるようになった。

 

 ちなみに「健康食品」という言葉がいつから使われているのかはっきりしないが、1971年の厚生省局長通知にこの言葉はなく、1979年には日本健康・栄養食品協会の前身である日本健康食品研究会が発足しているので、1970年代にはこの用語が一般的になっていたものと思われる。1984年に当時の経済企画庁が行った「『健康食品』の販売等に関する総合実態調査」を見ると、そのころ販売されていた健康食品の様子が分かる。主な原材料は朝鮮人参、にんにく、スッポン、マムシ、熊笹、エゾウコギ、霊芝、しいたけ、昆布、梅・杏、カキ・シジミ、オットセイ肉、花粉、小麦胚芽油、紅花油、深海鮫エキス、酵母菌、コンフリー、クロレラ、スピルナ、サポニン、レシチン、ユーグレナ、ローヤルゼリー、乳酸菌、ビタミンC、魚油(EPA)、石・鉱泉などと多彩で、大部分が古くから使われていた動植物性の天然素材であり、化学合成品はビタミンCだけであった。製品の1/3は「健康食品」、1/3は「栄養補助食品」と表示され、7割近くに「天然」や「無添加」を強調する表示があり、「がん予防」など疾病の予防・治療効果を宣伝するものが8割もあった。

                                     (つづく)